ガーデン・シティ・ライフ・ログ

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東北の庭園巡り・黒石〜平川編。黒石・金平成園、鳴海氏庭園、中町こみせ通りの町並み〜平川・盛美園、清藤氏書院庭園

東北旅行3日目。盛岡編はこちら。この日は弘前のホテルからスタートして弘前市周辺の庭園巡り。弘前周辺には国の名勝クラスの庭園が幾つかあるので、ある意味この日が東北旅行のメイン。弘前は見たいものが沢山あってこの日はかなりボリューミー。まずは弘南鉄道に乗って終点の黒石市に向かいます。

黒石・金平成園(澤成園)







国指定名勝。庭園は明治時代に作られたものでこの日多く目にする「大石武学流庭園」になる。この庭園は昨年まで改修工事を行っていて、昨年から時期を区切って一般公開を開始。この秋はこの週末までが公開期間だったのでそういった意味では今回の一番の目的。想像以上に素晴らしい庭園だった!池泉回遊式庭園のようで、大石武学流の庭園は、座敷鑑賞式(建物から座って眺める)である――であることが多いとのこと。当初は貴族院議員で実業家・加藤宇兵衛の別荘だったそうだけど、その後料亭になり、その頃に経営悪化が影響したのか、一部の灯籠や石は売られてしまったと説明を受けました。
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黒石・鳴海氏庭園


国登録記念物(名勝地関係)。鳴海醸造店「菊乃井」の中庭にある大石武学流庭園。てっきり公開していないものと思い込んでいたけど、観光案内所で「行って聞いてみてください」と言われたのでその通りに直接お店で聞いたら見せていただけた。地酒も美味しかったです。建物も↓のこみせ通りで強い印象を放つ。
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黒石・中町こみせ通り




重要伝統的建造物群保存地区。大きな建物の前の雁木がアーケードのようになっている町並み。これらは江戸時代から残っている町並みだそうです。雪が多い地域ならではの風景だし、色んな重伝建地区へ行ったけど初めて見るタイプの風景。ただ現在も街のメインストリートなのか車がビュンビュンと通る。もうちょっと西にもちゃんと広い通りはあるんだけど。街中で市の人にアンケートを受けたので、「せっかくの古い町並みなのに車通りが多過ぎる」とお答えしました。でも素敵な町並み!

黒石・それ以外の町並み

黒石の中心街は駅から南東部に碁盤の目のように形成されている。黒石の町は江戸後期には城下町であり「黒石藩」の中心だった。それだけの歴史がある街なので、昭和の商店街や歓楽街、デパート跡(大黒デパート)が残っている。あとはこみせ通り以外にもこみせになっている建物もあった(Google Mapによると「元酒蔵初駒の歴史的建造物群を保存活用する会」となってる)。東西の道がそのあたりで鍵型になっているのでそこが旧街道だったんだろう。








中村旅館

黒石の元遊郭建築。

スポカルイン黒石

黒石駅の近くにある現代建築は「スポカルイン黒石」という施設。スポーツ&カルチャーの略とかですかね。設計はエフ・アイ・オウアソシエイツ。

平川・盛美園









そして黒石駅から弘南鉄道津軽尾上駅へ(ちなみにその間に「田んぼアート駅」というのがあり、そこで降りてく観光客も居たけど僕は今回はスルー)。まず盛美園。国指定名勝。これは4年半前に一度来たことがあります借りぐらしのアリエッティのモデルになった建物と庭園。前回来た時は雪が積もっていたので通常の状態では初めて。ああこんな感じなんだなー。洋館と日本庭園の組合せは桑名の六華苑や鳥取の仁風閣など他でも見たことがあるけど、庭園の感じがやはり独特。なお盛美園は清藤氏の別邸にあたります。
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平川・清藤氏書院庭園




そして盛美園と同じ敷地内にあるのが清藤氏書院庭園。こちらも国指定名勝。前回来た時は冬季休業中だったので今回が初見。清藤氏はかつて鎌倉時代に鎌倉で北条氏に仕えていた。北条時頼の側室の一人・唐糸御前の都落ちに際し、護衛のため一緒についてきて北条時頼の命によりそのまま津軽に暮らし始めたのが始まり、とのこと。なので色々と説明をしてくださったその家の方もその子孫であり、清藤氏は750年程こちらに暮らしている、とのこと。鳥取の小川家や深田氏といい、普段の生活で出会うことはないけど本当に数百年と同じ場所に生きている家ってあるんだなあ――スケールが違う。この庭園が造られたのは江戸末期。この日多く見た「大石武学流」の中では最初期(元になった)庭園とされている。
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今回行けなかったけど近くにある猿賀神社というのが坂上田村麻呂が建立したとされる神社がある。そのエピソードとして、坂上田村麻呂蝦夷征伐では津軽の方では主だった戦いは起こらなかったこと。昔から津軽は食糧に恵まれていたため争いが殆ど起こっていなかった(だから三内丸山遺跡のような遺跡がある)。青森は今でも食糧が豊富で、日本国内の食糧自給率が40%に対し、青森県の食糧自給率は140%にも達する。余ってるんだよね!――的な話。食糧自給率の話を聞いて、なんか興味もなかったTPPの話が少し気になりだした。日本に外国から観光客にこれだけ多く訪れているように、自由貿易によって、美味しい・クオリティの高い日本の農産物はデメリットどころか大変人気を博す可能性を秘めているのでは――など。

以下は平川市(というか津軽尾上)それ以外。4年前来た時も書いたけど交番も盛美園仕様。市庁舎の前には割とちゃんとした庭園が作られています。時間があれば猿賀神社とかの方へ歩いて行きたかったんだけど、今回はその後の弘前もそんなに時間が無かったので…。またいつか来ます。地図で見ていると津軽尾上駅の東南の方に文化財が沢山あり、それが何かというと「農家蔵群」。これもいつか見に行ってみたいな。(商店街も駅の東側みたいだし)



弘南鉄道弘前に戻る。弘前編に続きます

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東北の庭園巡り・弘前編。瑞楽園、揚亀園、弘前公園(弘前城)、藤田記念庭園、仲町武家屋敷通り〜前川國男建築群、洋館・近代建築巡り〜奈良美智「AtoZメモリアルドッグ」

東北庭園巡り・弘前編。午前中の黒石〜平川から戻ってきて午後は弘前でレンタサイクルをして巡ります。庭園以外にも見たかったものが一杯あり過ぎて長くなったので分割。弘前へ来たのは2年ぶり

瑞楽園



弘前の中心部から岩木山の方角へ約8km。幾つかの集落を抜けて辿り着いたのが「瑞楽園」。国指定名勝。大石武学流の枯山水庭園で明治〜昭和に掛けて作られたもの。…なのですがちょうどこの日から雪囲いの準備がスタートしたそう。何も土曜日から始めないでも…ハシゴとか気になる…。時折雨が降る中頑張って行ったものの若干残念な結果に(まあ、実際この週末だいぶ寒かったから雪囲いが必要だったと思うけど)。あと「座鑑式だから」ということでお庭に降りて回遊することができなかったのも残念。あとだいぶ岩木山にも近づいたのに天気悪くて全く見えなかったのも残念!

ちなみにこの瑞楽園のある「宮舘」地区は大きな家屋や蔵が多い。瑞楽園の隣のお宅も道路から「ただものではない」庭園が見える(宮舘だけでなく途中の「時苗」の集落あたりから本格的な庭園を前庭にしているお宅がすごく多い。造園文化が盛んな地域なのかな)。りんごのカゴがあちこちから見え隠れするのでりんご農家が多いのかなあ。そして瑞楽園のあるお宅(旧対馬家住宅)の対馬家というのは、元寇対馬が攻められた時に北前船の安東水軍に助けられ、そのまま津軽まで来てこの地に暮らし始めた…だから対馬氏。という話が面白かった。一つ隣の集落に「つしま美容院」(だったかな、違うかも)といったお店があるなどこの地に似合わない苗字が流行っているのは対馬氏が当地の名家だった現れか。




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揚亀園




郊外の瑞楽園から市の中心部に戻る。揚亀園は弘前公園から道を挟んだところにある「津軽ねぷた村」内にある庭園。国登録記念物(名勝地関係)。こちらも大石武学流庭園で明治時代に作られたもの。津軽ねぷた村では他にも色々見られる。(こういういかにも観光施設は割と敬遠しがちなんだけど、面白かった!)



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弘前仲町武家屋敷通りと武家屋敷庭園(旧伊東家住宅)




重要伝統的建造物群保存地区。初めて弘前へ来た時にこの辺にも来たけど、重伝建地区に興味を持ち始めてからはまだ来てなかった。武家屋敷・旧伊東家住宅には庭園もある(元からあったものなのかは不明)。なお2014年から意識して始まった重伝建地区巡りはこの日の黒石で110箇所中57箇所目(一応この仲町武家屋敷は以前も来たので)。だいぶ行ったと思うべきかまだまだと言うべきか。また、この武家屋敷地区の入口にはこみせが特徴的な重要文化財建築「石場家住宅」もあります。

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弘前公園弘前城




現存十二天守の一つ、弘前城のある弘前公園。ちょうど「弘前城 菊と紅葉まつり」の真っ只中ですっかり景色はオレンジ〜赤色です。時間の都合で弘前城天守は見に行かず(一応2011年初めて来た時に見ました)。あと知らなかったんだけど植物園の中には庭園があったらしいので…また次回ですな…(瑞楽園もリベンジしたいしね…)。
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藤田記念庭園






ここも弘前城と同じく2011年以来。旧藤田家別邸洋館と和館は国登録有形文化財。庭園はこの日これまで見てきた大石武学流庭園とは異なってもっと現代的なものですが、高台部の庭園も低地部の池泉回遊式庭園も素晴らしいです。惜しむらくは、返す返すもだけどこの日の天気が悪くって岩木山が全く見えなかったことかな…。という感じで庭園巡りはここまで。以下は建物巡り。
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弘前前川國男建築巡り。

弘前には色々な建築がありますが、ル・コルビュジェに師事した日本建築の巨匠・前川國男の建築が集中している――ってことは知っていつつも今まで来た何度かは優先度的にそんなに高くなかったので巡ってきませんでした。暗くなり始めの時間で外観だけだけど、駆け足で巡りました(幾つかは国の文化財)。

木村産業研究所(弘前こぎん研究所)

前川國男の処女作の建築。国登録有形文化財

弘前市庁舎本館

下手側は現在工事中で見られず。国登録有形文化財

弘前市民会館

弘前市立博物館

弘前市緑の相談所


上記の3つは弘前公園内にあります。次回はもう少しちゃんと巡りたい(建物内も見たい)。

弘前の近代建築・洋館巡り。

前川國男建築以外にも弘前は近代建築や洋館が多く残る街。今まで結構見逃していたので今回はちゃんと地図を見ながら見に行った。…でも時間ももう暗かったのでかなり見逃している。また次回だなー。

旧第五十九銀行本店本館(青森銀行記念館)

弘前市図書

旧東奥義塾外人教師館

旧第八師団長官舎(弘前市長公舎)

神戸北野とかにもある、登録有形文化財のおしゃれスタバ!

弘前昇天教会

弘前・それ以外の町並み



奈良美智「AtoZメモリアルドッグ」

最後に、毎回見に来てる奈良美智さんの「AtoZメモリアルドッグ」…ってあれ?そこにあるはずのものがない…?撤去されたのかなーと思って一度離れかけたけど、検索したら昨年レンガ倉庫の中に移動したそうです。危ない。無事見られてよかった。

…という感じで暗い時間まで色々見て回りました。ほんとこの日は終日天気が悪かったのが残念(黒石〜平川に居た頃は少し晴れ間も見えたんだけど、弘前に戻ってきてから雨が復活してしまった)。暗い写真ばかりだし、「津軽富士」岩木山の風景は一度も見られずじまい。時折の雨で靴はずぶ濡れ。この日は気温こそ高かったけど雨水は超冷たい…。ところで弘前駅の北西辺りでは大規模な再開発中。元々この辺に何があったかも思い出せないけど何になるんだろうな。

青森市へ移動してこの日は終了(弘前はやはり旅行客が多いのか。土曜は手頃な宿が一気になくなった)。東北旅行最終日・青森市編へ続きます

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